先日タイのPanyapiwat Institute of Management(PIM)という大学で開催された国際学会(The 9th International PIM Conference 2023)で、企業研修として導入したドラムサークルの実証実験の結果を発表したところ、Best Paper Awardをいただくことができました。
PIMのParitud先生からLINEで「受賞したよ~」と連絡があり、親切にも賞状の写真を送ってくださいました。
Emotional Intelligenceとは
この論文のベースとなっている研究では、Emotional Intelligence(EIまたはEQとも呼ばれています)という概念を用いて、ドラムサークルがチームビルディングやチームの創造性などにどのように関わっているのかを説明しようと試みました。
チームビルディングの要素である凝集性(団結力)が「どうすれば」醸成できるのかについては、既に多くの研究や論文で明らかになっています。ただ、ドラムサークルが「どのように」チームビルディングに影響を与えているのかについてはまだ明らかになっていません。そこで私が今回取り入れたのがEmotional Intelligenceという概念です。
Emotional Intelligenceは、一般的に「自分自身や他人の感情を理解し、それらを適切に管理し、問題解決や意思決定に役立てる能力を表す概念」であると定義されています。この概念は、元々1980年代の心理学者Peter SaloveyとJohn D. Mayerによって提唱されました。
ビジネス界では、ダニエル・ゴールマンのベストセラーである『EQエモーショナル・インテリジェンス』の影響が大きいかもしれません。
https://dhbr.diamond.jp/articles/-/5419
ニデックの永守会長やソニーの平井会長などもよく言及されるため、リーダーシップの概念と思われがちですが、学術的研究では、Emotional Intelligenceと職業的な成功、リーダーシップ能力、心身の健康、人間関係の質の関係を検証するなど多岐に渡っています。
ドラムサークルとEmotional Intelligence 、チームビルディングの関係
この研究では、ドラムサークルに参加することで、参加者のEmotional Intelligence、つまり「自分自身や他人の感情を理解し、それらを適切に管理し、問題解決や意思決定に役立てる能力」が向上するのではないかという仮説を立てています。その結果、チームメンバーの間に信頼が生まれ、元気なチームが醸成されていくのではロジックです。
論文では、収集したデータの最初の分析ステップとしてEmotional Intelligenceのスコアが、研修前後でどのように変化するかを確認し、その変化についての分析を行っています。
データは強し…
経営学者が憧れるAcademy of Managementの年次学会などとは規模も基準も比べることはできませんが、それでも自分の論文がBest Paperというような選定の世界の候補になったことや、そこで賞をいただけたことは本当に嬉しく、そしてありがたく思います。
受賞の決め手はデータにあると個人的には思っていることもあり、入手が難しいデータを扱えるアドバンテージを痛感しました。今回研修時にアンケートを取ることを快諾してくださったとある企業の人事部のみなさまには感謝の気持ちでいっぱいです。また、データ収集を含め、常に研究をサポートしてくださるBeat of Successの皆様、本当にありがとうございます!
上記の通り、学会発表の内容は最初の分析ステップであるため、このデータを使って、チームビルディングと創造性、チームの信頼とEmotional Intelligenceの相関関係を分析するのが次のステップです。今回手ごたえを感じることができたので、Academy of Managementの来年の学会に応募してみようかな笑(2005年以来です…あれ、20年も経っちゃってる💦💦)
8月27日から3年ぶりのgPBL引率でタイに出向くため、その時にリアルな賞状を受け取ってきます。