メタ認知を簡単に説明すると「自分の思考や学習プロセスを客観的・俯瞰的に理解し、管理する能力のこと」というような表現になるでしょうか。
例えば、勉強しているときに「今の勉強方法が本当に効果的か?」と自分自身に問いかけ、疑問を持ったらやり方を変えてみる…などという行為もメタ認知を使った例になるかもしれません。
尊敬する上田先生はこの「メタ認知」の重要性をご著書の中でも説かれており、講義中に学生さんの議論が煮詰まってくると「メタに行こう!」と声をかけられると書かれていました。
学生のグループワークで議論が行き詰まることはよくあるため、私自身の担当する講義でも「メタに行こう!」を是非取り入れてみたいと思っていたのですが、
①多くの学生が「メタ認知」という言葉を知らない
②メタ認知と自分の考えを行き来できるようになる(=効果を実感する)には、ある程度の訓練量が必要なのでは?
という懸念がありました。
そこで考えたのが「ウエカラメセン」というエクササイズです。上記の懸念を克服するため、自分ではなく、他人の課題を扱うことで、メタ認知エクササイズの導入の障壁を少し下げてみました。
また、他人にアドバイスをすることに慣れていない学生が多いため、「ウエカラメセン帽子」という帽子を被ってアドバイスをする形にしました。こうすることで、「役割を演じている」というお膳立てができ、安心して発言できるのではないかと考えました。
①ウエカラメセン帽子を作る ➡ 授業の冒頭の数分を使って「ウエカラメセン帽子」を作ります。2〜3人で1つの帽子を作るようにすることで、工作が苦手な学生も焦らず参加できるようにします。帽子ができたら、全面に大きな「目」を自由に書き込んでくださいと指示します(何に使うかはまだお楽しみ😊)。
②「メタ認知」の説明を簡単に実施する ➡ 「自分の悩みはなかなか解決できないけれど、他人の悩みは意外に簡単に解決策が見つかるのはなぜ?」という素朴な疑問をベースにメタ認知を簡単に説明します。
③「ウエカラメセン」エクササイズの説明 ➡ グループのペアを作ります(例:グループAとB)。グループAは「ウエカラメセン帽子」を被ってグループBの周りに立ち、のアイディアや課題をヒアリングします。「ウエカラメセン帽子」はメタ認知の意識を忘れないようにするために被ります。
※ここで「ウエカラメセン」は「上から目線」とは違うこと、メタ認知の意識で臨むことが大切であることを強調します。
一定時間(8分〜10分)が過ぎたら、今度はグループBのメンバーがグループAのまわりに立ち、ウエカラメセン帽子をかぶります。グループAのメンバーは自分たちのアイディアや課題を伝え、Bからアドバイスを貰います。
ウエカラメセン帽子は小さすぎて、かぶって話すのは難しかったようです💦💦
ウエカラメセン・エクササイズについて言及していた学生の「ふりかえり」をピックアップしてみます。
学生の感想
本日の授業では、メタ認知という言葉を新しく知りました。メタ認知をすることで自分の意見を第三者目線から見ることが出来るので、今までに浮かんでこなかった新しい発想が思い浮かぶ可能性が高くなると思いました。
別のグループのアイデアを俯瞰して意見するアクティビティを行ってみて、自分たちのグループ内で考えるよりも色々な視点で考えられることが出来た。グループ内でアイデアや改善点を見つける時も、俯瞰して考えることが出来る様に工夫してみると応用できるのではないかと思った。
今日はアドバイスやウエカラメセンで自分たちの考えている内容が曖昧で具体的に決まっていないということが分かりました。また、ウエカラメセンや他のチームの話を聞くと、感情に訴えて楽しめるようなものが多かったので、逆に論理的なものでやってみるのはどうかという話になりました。
今回の授業をうけて、ウエカラ目線は難しいと感じた。具体的に、相手の話を聞いたうえで自分ならこうするという意見は言えるが俯瞰の視点をもって客観的な意見を言おうと思うと言葉が出なかった。
上から目線になって相手チームに意見するのは意外と難しかった。相手のチームに評価してもらうことで、より新入生に近い目線の意見を貰うことが出来て良かったと思う。
私は自分を俯瞰して考えたり、私情を完全に抜きにして客観的な意見を言うのが苦手なのですが、「ウエカラメセン」エクササイズを通して、メタ認知能力の大切さに気付きました。メタ認知能力はこれから就活のために自己分析をしたり、仕事をしていく中で確実に必要となってくる能力だと思うので、「ウエカラメセン」エクササイズを思い出してこれからも鍛えていきたいです。
今回ウエカラメセンを通して他のグループから意見をもらうことで引っかかっていた部分のヒントを得ることができた。
学生の感想を見てみると、メタ認知の説明のしかたが十分ではなかったような印象を受けました。客観的、俯瞰的という言葉を強調すると変に難しく感じてしまうのかもしれません。友達の悩みを聞く感じで…等、とっつきにくさを減らす表現方法を工夫する必要がありそうに思いました。
一方で、俯瞰で見ることで気づきがあった学生、俯瞰するという行為が大切だと思えた学生もいたようですので、改良を重ねてこれからも継続して続けて行こうと思いました。
気づき1:自分たちで帽子を作るとよりエンゲージできる?
もともとの計画では、時間短縮のために帽子は私が全て準備して講義に臨もうと思っていましたが実現できず、学生達に作ってもらって実施しました。結果的にはこれで良かったように思います。
後期の1限のクラスは、寒さが厳しくなる毎にエンジンがかかりにくくなりますが、手足を動かすことで学生の眠気も解消されているように見えました。
気づき2:かぶりやすい帽子が大事!
…とはいえ、上記の写真を見ていただくと、話に夢中になって帽子が取れてしまっている学生も多くいます。次回からは以下のようなパーティ三角帽子をしっかり準備して、目だけ自分たちで書いてもらうような形にしようかと思います(これなら帽子のゴムでしっかり止まります😊❗)。
100円ショップで購入した三角帽に目をつけてみました❗
2024年度の授業が楽しみになってきました😊❗